パートナーセールスを始めると、候補企業、面談メモ、紹介案件、共同施策の結果が、表計算、メール、CRMへ分かれがちです。相手は増えても、誰と何を進めるか分からなければ案件獲得ルートにはなりません。
この記事の結論
PRMとは、パートナーとの関係、合意、共同活動、紹介案件、支援内容をつなげて管理し、次の行動を決める考え方です。CRMが主に顧客と商談を管理するのに対し、PRMは協業相手との関係と案件化の過程を扱います。情報が分散し、担当や期限を追えなくなった段階が導入の目安です。
PRMは「Partner Relationship Management」の略で、日本語ではパートナー関係管理などと説明されます。専用システムを指す場合もありますが、実務ではパートナーとの協力関係を継続し、共同活動と案件を進めるための考え方・業務・管理方法も含めて使われます。
PRMはパートナーとの関係・案件・活動をつなげて管理する考え方
PRMの目的は、パートナー企業の名簿を増やすことではありません。どの相手と、どの顧客課題を一緒に解き、次に何をするかを関係者が判断できる状態を作ることです。
必要になる目安は、候補・合意・共同活動・紹介案件が複数の場所へ分かれ、担当者と次の行動を一度に追えなくなったときです。これは、すぐに専用ツールが必要という意味ではありません。まずPRMとして扱う情報と更新方法を一つにそろえる段階です。
顧客ではなく協業関係を管理の主語にする
顧客管理では、顧客企業、商談、売上が中心になります。PRMでは、協業相手との関係が中心です。相手の顧客層、補完できる価値、紹介しやすい課題、双方の役割、過去の共同活動をつなげます。
たとえば一社のパートナーから複数の顧客紹介が生まれる場合、個別案件だけを見ても、なぜその相手が紹介できたか、次にどの支援が必要かは分かりません。パートナーとの合意や活動履歴を案件と一緒に見る必要があります。
パートナーセールス自体の意味、紹介・共同提案・代理店の違いを先に知りたい場合は、パートナーセールスとは何かで全体像を確認できます。
候補から振り返りまでを一つの流れで扱う
PRMが扱う範囲は、契約済みのパートナーだけではありません。候補探索、初回面談、協業条件の合意、最初の共同活動、紹介案件、結果の振り返りまでを一つの流れとして扱います。
候補と面談した記録はあるのに次の行動がない、共同セミナーは開いたのに生まれた相談を追えていない、といった分断を見つけることがPRMの役割です。
PRMはCRMと管理対象が異なり表計算でも始められる
PRMとCRMは管理する関係の主語が異なります。一方、表計算は管理の考え方ではなく記録手段であり、PRMの最小運用にも使えます。三者を排他的な選択肢と考えず、管理したい情報、使う人数、共同活動の複雑さに応じて組み合わせます。
運用方法 | 主に見る対象 | 得意なこと | 注意点 |
|---|---|---|---|
CRM中心の運用 | 顧客と商談 | 顧客接点から受注までを営業工程として追う | パートナーとの合意・支援・共同活動が案件情報へ埋もれやすい |
表計算によるPRM運用 | パートナーとの関係・活動・紹介案件 | 少数の相手で管理項目を柔軟に試す | 関連付け、権限、更新履歴を手作業で保つ必要がある |
専用PRMツールによる運用 | パートナーとの関係・支援・共同活動・間接案件 | 複数の社内担当とパートナーで情報を共有する | 段階・担当・期限が未定義なら、導入しても次の行動は決まらない |
CRMは顧客と商談を中心に管理する
CRMは顧客との接点や商談を管理するために使われます。紹介された顧客案件を営業パイプラインへ入れ、提案、受注、失注を追う用途に向きます。
CRMへパートナー企業を登録することもできます。ただし、顧客とパートナーを同じ分類で扱うと、共同施策、相手への支援、相互の合意が案件情報へ埋もれる場合があります。CRMを使い続ける場合も、パートナー関係を識別する項目や関連付けを決めます。
表計算は少数の相手から小さく始めやすい
表計算は、管理項目をすぐ変えられ、少数のパートナーで運用を試しやすい方法です。PRMを始めるために、最初から専用ツールを導入する必要はありません。
一方、担当者ごとに別ファイルを作る、行が増えるたびに列の意味が変わる、案件と活動を別シートでつなげられない状態になると、確認作業が増えます。表計算の限界は、件数だけでなく、同じ情報を何度探し直しているかで表れます。
専用PRMツールは関係・共同活動・案件を横断して見る
専用PRMツールは、パートナー企業の基本情報だけでなく、「何を一緒にするか」「生まれた案件をどう扱うか」「次にどう支援するか」を横断して見るために使います。
専用ツールを導入していなくても、この管理の考え方を表計算や既存CRMへ反映できます。逆に、ツールを導入しても、段階、担当、期限が決まっていなければPRMは機能しません。
PRMでは五つの情報を担当者・次の行動・期限でつなぐ
この記事では実務上、中小BtoB企業が最初に管理する五つの情報を「PRM最小台帳」として整理します。すべての記録に担当者、次の行動、期限を付け、関係と案件が止まった場所を確認できるようにします。
パートナー基本情報と相互価値を残す
一つ目は、パートナー企業と担当者の基本情報です。企業名や連絡先だけでなく、相手の顧客層、相談される課題、自社が補える価値、自社から相手へ返せる価値を残します。
「顧客層が近い」だけでは、紹介や共同施策の理由になりません。どの顧客の、どの場面で協力できるかまで書きます。
合意と共同活動を残す
二つ目は、協力の目的、役割、対象顧客、紹介後の対応などの合意です。三つ目は、面談、紹介、共同提案、共催、相互の情報発信など、実施した共同活動です。
パートナー制度の参加条件、支援、案件登録、評価まで設計する段階は、中小BtoB企業のパートナープログラムの作り方で詳しく扱っています。PRMでは、その制度や合意が実際の活動で守られているかを記録します。
紹介案件と支援内容を分けて残す
四つ目は、紹介された顧客、紹介元、顧客の課題、担当者、現在の段階、次の予定、結果です。五つ目は、パートナーへ渡した資料、回答した質問、同行、提案支援、振り返りなどの支援内容です。
紹介案件と支援を分けると、案件が止まった理由を「パートナーが動かなかった」で終わらせず、顧客像が曖昧だったのか、説明材料が不足したのか、紹介後の対応が遅れたのか確認できます。
PRMが必要かは件数より情報連携の複雑さで判断する
PRMが必要になる時期を「パートナーが何社になったら」と一律には決められません。一社でも複数部署・複数案件が動けば複雑になり、十社でも一人が単純な紹介だけを扱うなら表計算で管理できる場合があります。
一人で少数を扱う間は表計算でも始められる
担当者が一人で、候補数が少なく、共同活動と紹介案件の関係を一つの表で追える間は、表計算から始められます。まず五つの情報をすべて埋めるのではなく、担当者、次の行動、期限が欠けないかを試します。
表計算で運用ルールを確かめておけば、後で専用ツールやCRMへ移す場合も、必要な項目と不要な項目を判断しやすくなります。
同じ情報を何度も確認し始めたら管理を見直す
次の状態が重なるなら、管理方法の見直し時期です。
- パートナー情報を担当者へ毎回聞かないと分からない
- 同じ企業へ複数の担当者が別々に連絡する
- 共同活動と、その後に生まれた案件を結び付けられない
- 紹介後の担当者や期限がメールにしか残っていない
- パートナー別の支援内容や成果を振り返れない
- 退職・異動で関係履歴を引き継げない
これは「すぐ専用ツールを買うべき」という意味ではありません。情報の正本、更新責任者、関連付けの方法を先に見直します。
一人の担当者が社内だけで一つの表を更新できるなら、表計算を続けられます。紹介元と顧客商談の関連付けが中心で、利用者が社内に限られるなら、既存CRMへパートナー項目を加える方法もあります。複数のパートナーと情報を共有し、支援、共同活動、紹介案件の権限や履歴まで分けて扱う必要があるなら、専用PRMツールを比較する段階です。
PRMツールを選ぶ前に管理目的と運用ルールを決める
ツールを先に選ぶと、入力できる項目は増えても、誰が何のために更新するか決まらないことがあります。まず管理目的を「パートナー一覧を作る」ではなく、「候補から最初の共同活動までの停滞を見つける」など、判断できる言葉にします。
管理する段階と更新責任者を決める
候補、初回面談、協業合意、共同活動、紹介案件、商談、結果など、自社が追う段階を決めます。段階を変える条件は、担当者の感覚ではなく、次回面談が決まった、対象顧客に合意した、紹介先の同意を確認した、などの事実にします。
各段階で誰が記録し、誰が確認するかも決めます。パートナー担当と営業担当が分かれる場合は、紹介が生まれた時点で責任を渡す方法を明確にします。
次の行動と期限を必須項目にする
PRMの記録は、過去のメモだけでは動きません。すべての進行中項目に、次に誰が、誰へ、何をするかと期限を付けます。
たとえば「関係構築中」ではなく、「自社担当が8月10日までに対象顧客の具体例を相手へ送る」と書きます。次の行動が書けない相手は、目的が決まっていないか、いったん保留にすべき候補です。
共有する情報の範囲を決める
パートナーと顧客情報を共有する場合は、何を、どの段階で、誰が共有するかを決めます。紹介前の顧客同意、連絡先の扱い、案件終了後の保管については、自社の契約・社内ルールと必要な専門判断に合わせて確認してください。
管理項目を増やす前に、閲覧できる人と更新できる人を分ける必要があるかも検討します。本記事では個別法令や契約条項の判断までは扱いません。
PRM運用は件数より次の行動が決まるかで見直す
PRMの画面や表が埋まっていても、共同活動や案件が進まなければ管理の目的は果たせません。月に一度など周期を決め、件数と同時に、次の行動が決まっている割合と停滞理由を見ます。
候補接点と案件成果を分けて見る
候補企業との接点、協業合意、共同活動、紹介案件、商談、受注は別の段階です。候補数を、そのままリード数や受注見込みへ読み替えません。
たとえばSparkLaboでは、パートナー候補紹介の目安を毎月2〜5社、年間30〜60社の期待値としています。これはパートナー候補との接点数であり、リード、商談、受注の数ではありません。PRMでも、候補接点から次の行動が決まり、共同活動や案件へ進んだかを段階別に記録します。
段階別の指標と改善方法は、パートナー施策のKPIで詳しく解説しています。
停滞理由を関係・施策・案件へ分ける
停滞は三つに分けて確認します。
- 関係の停滞:協力する目的や相互価値が合っていない
- 施策の停滞:対象顧客、役割、実施日が決まっていない
- 案件の停滞:紹介後の担当、次の行動、顧客側の判断条件が分からない
関係が合っていない相手へ説明資料を増やしても動きません。施策は実行できているのに案件へ進まないなら、顧客像や相談の兆しを見直します。案件だけが止まるなら、紹介後の引き継ぎと営業対応を直します。
SparkLaboでは、パートナー候補との接点づくりに加え、紹介・共催・相互の情報発信など、案件化につながる導線の設計を支援しています。PRMへ記録する対象がいない、共同活動が決まらない、記録しても次の行動へ進まない場合は、ツール比較の前に候補像と最初の施策を見直してください。
