提携に合意し、会社紹介資料を交換しても、パートナーが自然に動き始めるわけではありません。相手が顧客を思い出せない、説明文を作れない、最初の施策を選べない状態では、定例会を開いても近況共有だけになります。パートナーオンボーディングとは、提携先が実際に共同施策を始められる状態を作る立ち上げ工程です。
この記事の対象は、紹介、共催、相互配信など、両社が関与する最初の共同施策までです。相手が単独で商品を販売・提供する代理店では、ここで扱う工程に加えて、商品知識、提案練習、利用権限、品質確認などの教育工程が必要です。
この記事の結論
BtoBパートナーのオンボーディングは、提携目的と対象顧客をそろえ、相手が顧客を思い出して説明できる材料を渡し、最初の共同施策を一つだけ選び、担当者・期限・完了条件を決めて実行します。資料を渡した時点ではなく、両社が一度共同で動き、次の改善点と継続方法を合意した時点を完了とします。
パートナーオンボーディングは合意から初回実行までを区切る
この記事では実務上、オンボーディングを「目的、顧客像、説明材料、初回施策、稼働確認」の五つのゲートに分けます。順番に通すと、提携合意と実行の間で何が足りないか分かります。
- 提携目的を顧客の変化で言い直す
- 対象顧客と相談の兆しをそろえる
- 相手が説明に使う材料を一枚にする
- 最初の共同施策を一つ決める
- 一度実行し、継続条件を合意する
提携目的を顧客の変化でそろえる
「相互に案件を紹介する」だけでは、担当者は何をすべきか判断できません。「顧客が採用した営業担当を早く立ち上げられる」「システム導入前に業務を整理できる」のように、顧客に起こす変化へ言い換えます。
両社の目的が異なることもあります。一方は既存顧客への追加価値、もう一方は新規顧客との接点を求めているかもしれません。違いを隠さず、両立する条件をキックオフで確認します。
対象顧客と相談の兆しを具体化する
業種や従業員数だけでは、相手は顧客を思い出せません。「問い合わせはあるが提案で止まる」「営業を採用したが代表しか売れない」など、顧客との会話に表れる兆しを決めます。
対象外も同時に示します。予算、地域、提供範囲、既存取引、競合関係など、相談を受けても対応できない条件が分かると、相手は安心して候補を選べます。
初回実行の担当者と期限を置く
オンボーディング責任者は、資料を渡す人ではなく、最初の行動が終わるまで進める人です。両社一人ずつ担当者を置き、「二週間以内に候補顧客を一社ずつ確認する」のように期限を決めます。
経営者同士が合意しても、実務担当へ背景が渡らなければ止まります。経営者、営業担当、提供担当のうち、初回施策に必要な人だけを早い段階でつなぎます。
パートナーが動くための共通材料をそろえる
共通材料の目的は、自社サービスを詳しく教えることではありません。相手が「どの顧客を思い出し、何と説明し、次に誰へつなぐか」を判断できるようにすることです。
三十秒で説明できる紹介文を作る
説明文には、対象顧客、相談の兆し、支援できること、顧客へ確認する一言、次の行動を入れます。たとえば次の形です。
もし既存顧客から「営業を採用したが、商談の進め方が担当者ごとに違う」と聞いたら、営業の立ち上げ設計を支援できる会社があります。まず、現在の営業工程を整理したいか確認していただき、関心があれば三者で短い打ち合わせを設定します。
パートナーに文章を一から作ってもらうと、後回しになります。そのまま転送する文面と、口頭で使う短い説明を用意します。
対象と対象外を同じ資料に置く
共通資料は一枚に絞れます。対象顧客、相談の兆し、提供範囲、対象外、顧客の利点、説明文、窓口、次の行動を並べます。
詳しいサービス資料や事例集は、その一枚から必要なときに参照できれば十分です。資料の量を増やすほど、相手が顧客を説明しやすくなるわけではありません。
紹介型の一枚資料を具体的に作る場合は、BtoBの紹介用資料に載せる項目と1枚の作り方が補足になります。本記事だけでも初回施策は決められますが、対象顧客や相談の兆しを一枚へ落とす段階で使えます。
最初の共同施策は一つに絞って期限を置く
最初の施策は、相手の既存接点と両社の準備状況に近いものを一つ選びます。複数を同時に始めると、止まった理由が対象、説明、集客、提案のどこにあるか分かりません。
相手の既存接点に近い施策から選ぶ
施策 | 向いている状態 | 最低限そろえるもの | 最初に確かめること |
|---|---|---|---|
個別紹介 | 相手が対象顧客と直接会話している | 対象、紹介文、引き継ぎ先 | 相談の兆しを見つけて説明できるか |
共催勉強会 | 両社に近い顧客層があり、テーマを一緒に語れる | 対象、テーマ、登壇役割、集客予定 | 一つの課題で参加理由を作れるか |
メール相互配信 | 各社が適切に扱える自社リストと配信体制を持つ | 対象、文面、送信担当、反応後の窓口 | 相手の顧客に届くテーマを作れるか |
最初から最も大きな成果を狙うのではなく、両社が実行でき、反応から学べる施策を選びます。
メール相互配信では、利用できる自社リストか、配信停止への対応を誰が担うかなどを、各社の既存ルールに沿って実行前に確認します。相手の顧客情報を受け取ることを前提にせず、各社が自社の責任で送れる形から始めます。
紹介先がまだ思い浮かばない場合に、紹介件数だけを求めてはいけません。相談の兆しが広すぎないか、対象外が分かるか、顧客への説明に不安がないかを先に確かめます。
実行条件を五つ決める
施策を選んだら、対象、担当、期限、必要な材料、完了の定義を決めます。「紹介を検討する」では完了を判断できません。「対象顧客を各社三社確認し、候補の有無と理由を次回共有する」のように、実際に確認できる行動へ変えます。
初回実行後は稼働条件を確認して定例運用へ移す
オンボーディングは、両社が一度動き、うまくいった条件と止まった条件を確認し、次の運用を決めた時点で完了です。受注を必須条件にすると、顧客の検討時期に左右され、立ち上げ工程を評価できません。
完了条件を資料閲覧ではなく行動で見る
完了を判断する行動は、対象顧客を想起できた、顧客へ協業理由を説明できた、共同施策を実施した、結果を記録した、次の行動を合意した、の五つです。
SparkLaboのパートナー施策では、候補探索、関係構築、施策実行を一体で進めることで、最短3か月目からパートナー経由のリード獲得を狙えます。これは成果保証ではなく開始時期の目安ですが、提携後の実行を先送りしない理由になります。
続ける相手と再設計する相手を分ける
初回施策で成果が出なくても、すぐ提携解消と判断する必要はありません。対象顧客を思い出せたが説明で止まったなら、紹介文を直します。候補自体が出ないなら、顧客像や補完関係を見直します。担当者の時間を確保できないなら、施策を小さくします。
再設計しても共通する顧客を特定できない、両社の担当者を置けない、必要な情報共有や品質条件に合意できない場合は、実行を保留します。何がそろえば再開するかを一行で残し、見込みの薄い提携へ定例会だけを続けないようにします。
初回案件が動き始めた後の役割分担は、BtoB共同営業の進め方が補足になります。継続運用でどこが詰まっているかを測る場合は、パートナー施策のKPIを確認してください。
まず一社について、顧客に起こす変化、相談の兆し、説明文、最初の施策、担当者と期限を一枚にしてください。次回の定例会を情報交換ではなく、その一枚から初回実行を決める場に変えることが、オンボーディングの第一歩です。
