顧客数が少ない中小BtoB企業でも、顧客分析はできます。大切なのは、大量のデータや高度なツールを先にそろえることではありません。何を判断するための分析かを決め、受注と失注を同じ粒度で比べることです。
この記事の結論
中小BtoB企業の顧客分析は、先に「営業先を選ぶ」「失注を減らす」など一つの判断目的を決め、既存顧客と失注商談を同じ表へ並べます。顧客属性、課題、購入・失注理由、収益性、継続性の五軸で事実を比べ、共通点を仮説にし、次の営業対象か改善行動を一つ決めます。件数が少ない間は精密な予測より、例外も残して検証を続けることが重要です。
顧客分析は一つの営業判断から逆算する
分析の目的が「顧客を理解する」のままでは、集める情報が増えるだけです。分析後に何を決めるかを先に一つ選びます。
分析目的は一つに絞る
たとえば、「次の営業先を選ぶ」「商談で確認する質問を直す」「利益の残りにくい案件を減らす」では、見る情報が異なります。
営業先を選ぶなら、受注した企業の属性と課題を重く見ます。失注を減らすなら、検討開始のきっかけ、比較基準、止まった工程を見ます。一度の分析で全部を解こうとせず、今回決めることを一文にしてください。
分析単位を一社か一商談にそろえる
一社に複数の案件がある場合、会社単位だけでは購入理由が混ざります。案件ごとの違いを見たいときは、一行を一商談にします。継続性や取引全体を見たいときは、一行を一社にします。
途中で単位を変えると比較できません。最初は対象期間と単位を決め、同じ条件で並べます。
既存顧客と失注商談を同じ粒度で集める
受注顧客だけを見ると、「業種が同じだから売れた」のような都合のよい説明になりがちです。同じ時期に失注した商談も並べると、違いを確認できます。
属性より先に顧客の状況を記録する
業種、従業員規模、地域は探しやすい情報です。しかし、同じ業種でも、困りごとが表面化している会社と、まだ優先度が低い会社では買う理由が違います。
「採用数が増えて入社手続きが追いつかない」「既存紹介だけでは案件が不足した」のように、検討が始まった状況を記録します。属性は、その状況が起きやすい企業を探す補助情報として使います。
事実と社内の解釈を分ける
顧客が話したこと、提案金額、参加者、日付は事実です。「価格が高かったはず」「担当者の熱量が低かった」は社内の解釈です。
同じ欄へ書くと、仮説が事実に見えます。「確認できた事実」と「原因仮説」を分け、分からない項目は空欄にします。失注理由を詳しく集めたい場合は、BtoBの失注分析のやり方も参考になります。
少量データは五つの軸で比べる
件数が少ないと、細かな割合は偶然に左右されます。まずは一件ずつ読み直せる表を作り、次の五軸で違いを探します。
比較軸 | 記録する内容 | 見つけたい判断材料 |
|---|---|---|
顧客属性 | 業種、規模、地域、商流、役割 | 同じ課題が起きやすい企業 |
課題 | 検討のきっかけ、困りごと、期限 | 動き出す兆し |
購入・失注理由 | 比較基準、決め手、止まった理由 | 提案や確認の改善点 |
収益性 | 売上、提供工数、外注、手戻り | 続けられる案件条件 |
継続性 | 更新、追加相談、紹介、解約背景 | 長く価値を出せる関係 |
購入理由と失注理由を対で見る
受注案件で「経営者の紹介があった」が共通していても、失注案件にも紹介が多ければ、それだけが決め手とは言えません。受注側だけに多い条件、失注側だけに多い詰まり、両方にある条件を分けます。
購入理由は顧客の言葉を優先します。営業担当者の自己評価だけで決めないことが重要です。
収益性と継続性を売上額から分ける
売上額が大きくても、個別対応や手戻りが多ければ利益と時間を圧迫します。逆に、初回売上が小さくても、課題が明確で追加相談や継続利用につながる顧客は、長期的に相性がよい場合があります。
「大口顧客」を探すのではなく、自社が無理なく価値を出し続けられる条件を確認します。
分析結果は一つの仮説と行動へ変える
分析表が完成しても、営業対象や会話が変わらなければ成果にはつながりません。共通点を一つの仮説へ変え、短い期間で確かめます。
共通点だけでなく例外を残す
「従業員五十人以上がよい」と決める前に、その条件に合わない受注顧客と、条件に合う失注商談を確認します。例外には、より本質的な条件が隠れています。
たとえば、規模ではなく「専任担当が不在」「三か月以内に体制変更がある」といった状況が決め手かもしれません。最初の分析結果は結論ではなく、次の商談で確かめる仮説として扱います。
次の十件で検証する
仮説を「この課題があり、期限が決まっている企業は、初回商談で具体的な検討へ進みやすい」のように一文にします。次の営業先、初回質問、提案内容のうち、一つだけ変えます。
十件を目安に、当てはまった事実、外れた理由、新しく分かった条件を記録します。件数が増えたら分析表を更新し、対象を狭めすぎていないかも見直してください。
顧客分析で自社の優先顧客像が見えた後、紹介や共同提案に使うには、協業先と同じ言葉へそろえる必要があります。パートナー営業で使う共通顧客像の作り方では、二社で合意する項目と更新方法を整理しています。まずは直近の受注五件と失注五件を同じ表へ置き、五軸のうち事実が欠けている欄を一つ確認するところから始めてください。
