提携したい企業が見つかっても、会社案内とサービス資料を送るだけでは話が進みにくいものです。相手が知りたいのは、自社の詳しい沿革ではありません。「どの顧客課題を、なぜ二社で解くのか」「自社にどんな利点と負担があるのか」「最初に何を試すのか」です。
この記事の結論
業務提携提案書には、提携の背景、顧客の共通課題、双方の補完関係、相手側の利点、最初に試す協業案、役割と必要資源、次に合意したい事項を、相手が判断する順にまとめます。完成した提携像を押し付けるのではなく、事実と仮説、決定事項と未決事項を分け、次の打ち合わせで何を決めるかまで示します。
業務提携提案書は相手の判断順に7項目を並べる
業務提携提案書は、自社を売り込む資料ではなく、相手が「一緒に検討する価値があるか」を判断する資料です。次の7項目を、背景から次の合意まで一つの流れにします。
- 提携を検討する背景
- 両社の顧客に共通する課題
- 双方の強みと補完関係
- 相手側の利点
- 最初に試す協業案
- 両社の役割と必要な資源
- 次の打ち合わせで合意したい事項
冒頭で提携を検討する理由を示す
冒頭には、候補企業へ声をかけた理由を一文で置きます。「事業に共感したため」だけでは、協業の必要性が分かりません。「両社の顧客から同じ相談を受けており、前後の支援をつなげると顧客の手戻りを減らせる」のように、顧客側で起きている問題から始めます。
続けて、その問題について確認できている事実と、まだ確かめていない仮説を分けます。相手の顧客構成や社内事情を推測で断定すると、提案の信頼を落とします。
中盤で協業の仕組みを具体化する
中盤では、双方が持ち寄る顧客接点、専門性、提供機能を並べ、どこで補い合えるかを示します。単に「相互送客する」ではなく、誰が顧客のどんな兆しに気づき、誰が何を支援し、顧客にどんな変化が生まれるかまでつなげます。
自社の強みは、言い切るだけでなく、関連する実績、担当できる工程、担当者や提供体制のいずれかで裏付けます。まだ確かめていない能力や体制は、確定事項にせず初回施策で確認する項目として置きます。
役割には営業窓口だけでなく、企画、集客、商談、提案、契約、提供、振り返りを含めます。ただし、最初の提案書ですべてを確定する必要はありません。仮置きの役割には「要相談」と明記します。
最後に次の合意事項を置く
提案書の最後は「ご検討ください」で終わらせません。次の打ち合わせで、対象顧客、最初の施策、担当者、期限の四つを決めたいと示します。
提案書の役割は契約を一度で取ることではありません。相手が社内で説明でき、次に何を話せばよいか分かる状態を作ることです。
相手の利点は顧客課題と補完関係から書く
相手の利点は「売上が増える可能性があります」だけでは伝わりません。顧客への価値、営業への価値、提供体制への価値を分け、相手が負う作業やリスクも同じ欄で示します。
相手の会社ではなく相手の顧客から考える
次の文型にすると、相手の利点を顧客課題から書けます。
貴社の顧客が「〇〇」という状況になったとき、貴社の「△△」と当社の「□□」を組み合わせることで、顧客は「◇◇」まで一つの流れで進められます。貴社は「新しく得られる価値」を得られます。
たとえば、営業支援会社と採用支援会社なら、「営業人材を採用したが立ち上がらない」という顧客課題に対し、採用後の営業設計までつなげる協業が考えられます。顧客像が共通するだけでなく、課題の前後がつながることが重要です。
売上以外の負担とリスクも書く
相手にとっての価値には、提案範囲の拡張、既存顧客への追加支援、案件の取りこぼし防止、提供品質の補完などがあります。一方で、担当者の工数、顧客への説明責任、情報共有、品質確認も発生します。
良い提案書は利点だけを大きく見せません。「初回は紹介文の確認に30分必要」「顧客の同意後に必要情報だけ共有する」など、負担を小さく始める方法も併記します。
実際のSparkLaboの顧客事例では、リファラル中心だった営業コンサルティング企業が、同規模の経営者や営業支援会社など、協業相手の型を具体化しました。協業を進めた結果、4か月で成約売上300万円が生まれています。提案書でも「幅広く連携したい」ではなく、誰と、どの顧客課題で、何を補うかを示すことが、実行可能な会話の出発点になります。
最初の協業案は小さな検証として設計する
最初の協業案は、完成したパートナープログラムではなく、両社の仮説を確かめる小さな実行案にします。対象、施策、期限、観測項目の四つがあれば、実行後に続けるか変えるかを話せます。
一つの顧客課題と一つの施策に絞る
「紹介、共催、相互配信をすべて始める」と書くと、どの部署が何を準備するか決まりません。最初は「特定の相談があった既存顧客を一社ずつ想起する」「一つのテーマで共催勉強会を開く」など、一つの顧客課題と一つの施策に絞ります。
施策を選ぶ基準は、早く売上が出そうかだけではありません。両社が顧客へ自然に説明できるか、少ない準備で試せるか、反応から学べるかを確認します。
成否を判断する観測項目を決める
最初の検証では、受注だけを成否にしません。対象顧客を思い出せたか、顧客へ説明できたか、面談に進んだか、どの不安で止まったかを記録します。
提案書を送る前後に確認すること
提案書は、送付して相手の返事を待つ資料ではありません。送付前に誤解を減らし、打ち合わせで仮説を共同案へ変えるために使います。
送付前に仮説と事実を分ける
送る前に、相手企業について公開情報で確認した事実、自社顧客から確認できた課題、自社側の仮説を色や欄で分けます。未確認の売上規模、顧客数、社内方針を事実のように書かないことが大切です。
また、相手の担当者が上司や関連部署へ転送しても意味が通じるかを確認します。口頭説明がなければ分からない略語、主語のない図、自社だけが得をする表現は修正します。
打ち合わせでは未決事項を合意へ変える
打ち合わせでは、提案書を最初から読み上げません。相手が違和感を持った顧客像、利点、負担を先に聞きます。そのうえで、最初の施策、担当者、期限、次回までの準備を合意します。
共通する顧客課題、相手側の利点、最初の小さな施策のどれか一つでも説明できない場合は、提案書を送らず、候補選定または仮説確認へ戻ります。七項目を埋めることより、協業を検討する理由が成立していることを優先します。
候補探しの段階から見直す場合は、BtoB営業パートナーの募集方法が補足になります。提携後に顧客へ共同提案する流れは、BtoB共同営業の進め方で確認できます。
業務提携提案書を作り始めるときは、まず候補企業一社について「どの顧客課題を、なぜ二社で解くのか」を一文で書いてください。その一文から、相手の利点、最初の小さな施策、次に合意することへ広げれば、自社紹介ではなく協業判断のための資料になります。
