製造業のシステム、クリエイティブ、デジタル教育
(中田) 自己紹介をいただいてもよろしいでしょうか?
(早野様) トップノート株式会社の早野と申します。事業は大きく3つあります。
1つは、製造業のオペレーションシステムを特化型でつくるシステム開発。2つめがクリエイティブ制作で、SNSの運用代行、ホームページ制作、紙のリーフレット、コーポレートロゴまで手がけています。3つめが教育事業で、AIの導入支援から、SNS運用を内製化するための教育支援まで。
話すとすごく長いんですよ。自己紹介だけで1時間を超えてくるので、一旦これぐらいにしておきます。
どこの交流会に行っても、工場を持っている社長が現れなかった
(中田) SparkLaboに入る前、新規の顧客開拓で課題に上がっていた点はありましたか?
(早野様) 交流会に来る人の属性には、かなり偏りがあると思っています。
うちはスクラッチのシステム開発、それも製造業向けなので、とにかく工場を持っているお客さんと出会いたかった。ところが、どこの交流会に行っても、製造工場を持ってものづくりをやっている社長さんは、まず現れないんです。
(中田) どれくらいの数を回られたんですか?
(早野様) 15個から20個は、いろんな経営者コミュニティに入ってみました。「この属性が欲しいです」と言い続けて、自己紹介を繰り返して。
繋がれたのは、たとえば元キーエンスの方。でも実際に自分で工場を経営してものづくりをやっている人には、一人も会えませんでした。
会いたい人にだけ会えない。その課題感がずっとありました。
(中田) 事業の方向性にも影響が出ていたのでしょうか?
(早野様) メインにしたいのは工場のオペレーションシステムなんですが、スクラッチでいろんな開発をやってきているので、どうしても他の案件を受けざるを得ない。
言葉は悪いですが、やりたい仕事があるのに、やりたくない仕事ばかり受けている状態でした。工場以外のお客様のスクラッチ開発ばかりで、方向性が違うな、と。
そう思っていたときに、樫根さんに出会いました。
携帯片手に、その場の全員から話を聞いて回っていた人
(中田) 樫根様と出会ったのは、どのようなときだったんですか?
(早野様) 樫根さんは「全然覚えてねえわ」と言うんですけど、僕ははっきり覚えていて。
(樫根様) いやいや、覚えてますよ。
(早野様) ラフメーカーの田口さんと、ファーストビレッジの佐々木さんが開いていた交流会です。麻布十番の、秘密基地のような場所でした。
(早野様) そこで樫根さんが、携帯片手にいろんな人へ事情聴取をして回っていたんです。「何やってるんですか、何やってるんですか」って。「何だこのかっこいい人は」と思いながら見ていました。顔立ちが日本人っぽくないけど日本人なのか、とか考えながら。
やたらと携帯にメモを取りながら、何をやっていて、どれくらいの規模の会社に、どんなプロダクトを当てに行っているのか。そこまで聞いてくるんですよ。
一人に深く入るというより、その場にいた全員から事情聴取をするタイプだったので、僕の顔は覚えていなかった。僕のほうはしっかり覚えていたんですけど。
連絡のない空白の1年。そのあとに届いた「入ってこない?」
(中田) そこから、どのような流れで入会されたのでしょうか?
(早野様) 1年も経たないうちに、樫根さんから連絡が来ました。「SparkLaboっていうのをやるんだけど、まだ形になっているというより、これから跳ねさせていくから、入ってこない?」と。
お互い交流会疲弊組だったんです。いろんな交流会に出て頑張って、終わったらまた次の交流会へ。その繰り返し。
自己資金だけで起業した世代は、よほどのツテがない限り、すぐには安定期に入れない。そこは二人とも感じていたと思います。
だから樫根さんは、「若手にチャンスがあるようでない。もっと若い人にチャンスが生まれる仕組みをつくりたい」と熱弁していました。
正直、中身はあまり分からなかったんです。でも一生懸命やるぞ、という気持ちは伝わってきたので、「ちょっとやってみるわ」と言って入りました。
(中田) 出会ってからの1年間は、樫根様とお会いすることはあったんですか?
(早野様) いえ、本当に空白の1年です。
それなのに、いまは共催ランチ会という形で月に1回は必ず会っている。1年空いていたのが嘘みたいに、距離が近くなりました。
供給と供給がぶつかる場では、何も起きない
(中田) 入られてから、普通の交流会との違いを実感されたのはどこですか?
(早野様) 圧倒的に違うのは、リファラルの質もそうですが、アライアンスの強さです。
商材を持っている人同士が集まると、供給と供給がぶつかることになる。自分のものを買ってほしい人と、買ってほしい人。これでは商いになりません。
結果、名刺を交換して終わり。社交辞令で「またぜひ」と言い合っても、その「また」は大抵来ない。
(中田) SparkLaboでは、そこが違ったと。
(早野様) 樫根さんのところがすごいのは、自分のプロダクトを売ることを前に出す人が少ないことです。
自分の商材よりも相手の商材の理解を深めて、自分の畑と接続したら一緒に何ができるか。その共存戦略を考えてくる人が多い。
そこが、質の違いだと思っています。
失注しかけていた案件を掘り起こし、半年で1,000万円を超えた
(中田) 具体的には、どのような協業が生まれたのでしょうか?
(早野様) Web広告代理店をやっている石井さんとです。僕は開発とクリエイティブなので、お互いに出会えなかったお客さんを持っている。
そこで、失注しかけていた案件を掘り起こして、お互いのプロダクトを連結して一緒に提案してみないかという話になりました。
その方だけで、半年で1,000万円は余裕に超えています。1,200〜1,300万くらいですね。
(中田) いまもその方とは、やり取りが続いているんですか?
(早野様) いまでは樫根さんよりも、その方との定例のほうが多いです。週に1回以上やって、その合間にも電話している。「うちの社員か」というくらいのやり取りですね。
(早野様) しかも、1,000万に加えてもう2件。樫根さんもご存じの、新潟に行った戸田さん経由で、専門学校のホームページリニューアルが500万円ほど。決まっているものに加えて、まだ大量に来ているので、最近は「もう少しペースダウンしない?」と話しているくらいです。
(早野様) いろんな人にいい顔を見せ続けて薄い関係を築くコミュニティではなく、「この人だ」と決めた相手と強固な関係を築いて、そこから商いを広げていく。その印象がとにかく強いですね。
違いは、間に立つ人の質だった
(中田) 回られていた他のコミュニティとは、どこが違ったのでしょうか?
(早野様) 15個から20個を回って感じたのは、だいたい紹介の数に制限があるということです。「月に3人」と決まっていれば、その3人だけ。しかも、なぜ紹介されたのかが双方とも分からないまま話が始まる。波長が合わなければ「またいつか」と言って、それきりです。そういう会が7割ほどでした。
(早野様) コンシェルジュが付いて話を聞いてくれるところもありました。ただ、業務委託で「人の話を聞いておいて」とアサインされた方が多いので、事業理解が追いつかない。「この人とこの人を繋げたらいい」という感覚が、どうしても弱いんです。
(中田) SparkLaboのコンサルタントは、そこが違いましたか?
(早野様) 全然違います。一人ひとりが、樫根さんから供給される人脈を使いながら、自分自身も頻繁に交流会へ出ている人たちなんです。
だから、樫根さんのタンクから渡される知恵と、自分の足で見つけた接点の両方を持っている。共通点を自分で結びつけて、提案してくれる。
しかも紹介の件数が決められているわけでもない。気づくと、僕の担当ではない方からも「この人がいいと思ったので」と繋いでくれる。本来は担当から供給されるのが標準だと思うんですが、そうではない人からも話が来る。かなりユニークだと思います。
(早野様) 入っていれば、いい人との巡り合わせができる。だから僕はいま、15個あった交流会を3つまで減らしました。そのうちの1つが、樫根さんのところです。
独り勝ちしようとする人が、そもそも入ってこない
(中田) なぜSparkLaboが、共存戦略の生まれる場所になっているとお感じですか?
(早野様) 樫根さんは「いいやつ会」という名前の付け方をしていますが、本当に類は友を呼ぶなんだと思います。
樫根さん自身、いい意味で癖がある。頑張り屋で、どこか尖っている。だから周りに集まる人も、いい意味で癖のある人が多い。
ただ、その癖には「自分だけが独り勝ちしよう」という思想がないんです。樫根さんが、そういう人を入れないようにしている。意識的にか無意識にかは分かりませんが、自然とそうなっている。
だから集まる人は、相手を理解したいという欲が強い。それをみんなが自然にやっている。
樫根さんが厳選して入れた人たちが、結果的に自分のことより相手の事業理解を深めて、自分と接続しようと考える人ばかりになっている。それがコミュニティの土台になっていて、新しく入ってくる人も自然とそうなっていく。そういう状態だと思います。
デジタルから始まって、結局アナログに行き着いた
(中田) 入られたときから今に至るまで、集まる人の雰囲気やクオリティに変化は感じますか?
(早野様) これを言うと樫根さんに怒られるんですが、僕はいま、ちょっと幽霊部員なんです。最初はよく行っていたんですが、あまりにうまくいったので。これ以上パートナーを増やしても、自分が捌けなくなって満足度を下げてしまう。それで足が遠のいています。
(早野様) もともとはデジタル名刺から広がった会社だと思います。樫根さんが入会者の名刺を集めてデータで管理し、会いたいと思われる属性をAIも使いながら割り出して、経営者同士に接点を持たせる。そういう構想でした。
ただ、データで結びつけても、人の波長が合うかどうかまでは分析できません。タグ分けで相性が良さそうだから接点はつくれる。けれど本当に合うかどうかは、顔を見ないと分からない。
結果として、デジタルから始まった会がアナログに行き着いた。いまはピックルボールや卓球のような、部活に近い場を樫根さんがたくさんつくってくれています。
デジタルだと騒がれていますが、質を高めているのは結局、アナログの接点づくりなんです。
(中田) デジタルのときは、戸惑いもあったのでしょうか?
(早野様) ありました。「何十件います」と言われても、何十人をさばいたところで覚えていない。本当に合う人は30人に1人くらいだろうと思っていました。
数より、本当にいいと思える人と2、3人会えるほうが心地いい。数を打つデジタルの理論より、限られた人との接点を演出してもらえる、いまの形のほうが合っています。
卓球台の横で決まった受注
(早野様) この間、卓球会に行ってきました。なぜ卓球なのかと聞いたら、「自分がマウント取れるスポーツだから」と。樫根さんらしいなと思いました。
(中田) それも樫根様の戦略なのでしょうか? 卓球やピックルボールといったフィジカルの場をつくるというのは。
(樫根様) それはそうですよ。楽しむためにやっているわけじゃない。もちろん戦略です。
(早野様) 実際、そこから商いが生まれているんです。
卓球会で石井さんと久しぶりに会って、「なんで早野、久しぶりに来てんじゃねえか」「お前が来てたから卓球来たんだよ」と。
そのまま卓球をやりながら「この案件あるんだけど」という話になって、「じゃあ明日話そう」と。そこから受注が決まりました。
リアルの場で話すのは、遠回りに見えて、いちばんの近道です。それを実感しました。
「広告しか武器がない」状態を、二人で越えた
(中田) 石井様とは、どのように役割が噛み合っているのでしょうか?
(早野様) いまは広告運用が、かなりしんどいんです。博打の要素が強くて、広告予算を出せるのは資本力のある会社に限られる。低予算でやる会社はあまりいません。
そうなると、「プロダクトを跳ねさせたい」という依頼が来たときに、広告運用という武器だけで当てに行くと、「固定費で月100万はしんどい」と断られ続けてしまう。
昔はそれでもよかった。でもいまは広告単価も上がっていて、「それだけ払って成果が出るのか」と聞かれると、次の手が出ない。
だったら、もっと確実で、ライトな接点づくりができたほうがいい。お客さんが見た瞬間に「これなら期待できそう」と思えるネタを出したい。そう言われて協力することになり、引き合いが来るようになりました。
(中田) どのような相談が多いのでしょうか?
(早野様) 石井さんのところに来る相談は、かなり抽象的なんです。「プロダクトを持っているけれど、いまいちイケていない。どうすればイケているように見せられますか」といった形で。
そもそも商品の設計から手を入れないといけない案件もあります。もはや広告運用という次元ではない情報が、石井さんのところにはたくさん集まっていた。
石井さんは運用はできても、設計まで手を入れる時間がない。そこで僕がメスを入れました。「ここの設計を変えればこう見えるから、この形で提案すれば勝てる」と解剖していって、一緒に提案する。それで、ズバズバ決まるようになっていきました。
認知症の啓蒙を、ショートドラマで
(中田) 実際に生まれた協業の、具体の内容を教えていただいてもよろしいですか?
(早野様) お客さん名は伏せたほうがいいかもしれませんが、関わっている登場人物で言うと、まずエーザイさん。上場している製薬メーカーで、アルツハイマーなど認知症に特化した新薬を開発されています。そこがメインの取引先です。
(早野様) 今回の取り組みは、MCI(軽度認知症)の啓蒙です。
認知症になったら認知症だろう、と思われがちですが、本人が気づいていない軽度の段階にいる人が世の中にはたくさんいる。その人たちを早期受診につなげたい、という活動でした。
(早野様) 大きい会社は広告予算を莫大に投下します。でもテレビにいくら投下しても、どれだけ来たかを定量的に測れない。
だから「病院ごとにチャネルを切って、MCIというキーワードでどれだけの人がLINEに繋がったかを計測したい。病院とコラボして戦いたい。でも施策が欲しい」という、かなり曖昧なテーマから始まりました。
(早野様) いまはエーザイさんを起点に、横浜市役所と、横浜市の脳卒中の病院の院長先生、そして僕らという関わり方になっています。
(早野様) 施策としては、MCIを寸劇形式のショートドラマにしました。うちは元吉本の芸人さんやホリプロの方を起用できるので、その方々に演じていただく。
「MCIだから毎日違うことを言っている」という状況をドラマに仕立てて、自分の父や母にも早期受診を勧めようと思わせる。感情を揺さぶるSNS動画の戦略です。
すでに受注は決まっていて、いま一気に詰め込んでいるところです。大手なので開示に時間がかかり、リリースは11月、12月になりますが、正式受注をいただいて動いています。
(中田) この案件に早野様が入られたのは、どういう経緯だったのでしょうか?
(早野様) もともとは広告運用で直受けされていて、先方からも広告運用の会社として見られていました。
そこで「MCIを広めたい」という話が出たときに、広告しか武器がないより、大衆向けの戦略まで絵が描けたほうが成約率を高められる。そういう理由で、僕がいきなり呼ばれて入ったんです。
院長先生と先方が「それなら勝てそうだからやりたい」と言ってくださって。
そこから、SNSだけでなく定量的に数値を測るならLPを作ってUTMパラメーターを仕込む必要がある、という話になり、別件として追加予算もいただけることになりました。仕掛けの開発まで一気通貫でやらせてもらう形に化けていった、という流れです。
まだ全体の2割しか話していない
(中田) 最後に、これからSparkLaboの入会を考えられている方に、一言いただいてもよろしいですか?
(早野様) とにかく、癖のある樫根を信じろ。その一言です。
悩みは、みんな同じだと思うんです。創業から20年経っている人には、もうお客さんのパイがある。でも起業して3年未満の人は、頑張ろうと思っていても頑張り方が分からない。
自分なりに交流会に行って、有料サービスを契約して、営業代行も使って。それでも、という人がいると思います。
そういう人は全員、まず一度、騙されたと思って樫根さんが主催する場に来てみてほしい。論より証拠で分かるはずです。
困りごとが何かなんて考えずに、一度来なさい。そう言ってあげたいですね。
(中田) ありがとうございました。
(早野様) こんなもので大丈夫ですか。まだ全体の2割くらいしか話していない気がするんですが。
