受託開発の下請け依存から抜け出すには?直接取引を増やす進め方

元請けの発注を待つ状態を変えたい受託開発会社へ。今の売上を守りながら直接取引を増やすために、最初の案件の選び方、顧客対応の準備、紹介から相談を生む方法を解説します。

目次

仕事はあるのに、次の売上は元請けの発注次第。直接取引を増やしたいと思っても、開発や納品に追われ、営業まで手が回らない。そんな悩みを持つ受託開発会社もあるでしょう。

この記事でいう下請けは、顧客から仕事を受けた元請け企業を通じて、開発の全部や一部を受ける形です。直接取引は、システムを使う顧客と自社が直接契約する形を指します。

この記事の結論

受託開発の下請け依存から抜け出すには、今の取引を続けながら、自社で対応しきれる小さな案件を選び、新しい顧客との接点と、顧客と直接契約して納品まで進める体制を並行して作ります。

まず目指すのは、元請けの仕事をすべて手放すことではなく、自社でも案件を生み出せる状態です。今の売上を支える取引を大切にしながら、直接取引の最初の1件へ進む方法を整理します。

開発力があっても下請け依存が続く理由

元請けを通じて仕事を受ける形では、顧客を探すことや、作る内容を整理することを元請けが担う場合があります。その分、開発に集中しやすくなります。

一方、その仕事の進め方だけを続けていると、自社で直接取引を増やすための準備が後回しになりがちです。まず、次のどこで止まっているかを確かめてみてください。

  • 顧客との接点がない。 話す相手が開発会社に偏り、システムを使う企業の経営者や担当者と会う機会が少ない。
  • 技術は説明できるが、役に立つ場面が伝わらない。 対応できる言語や人数は伝えていても、顧客のどんな仕事を楽にできるかを示せていない。
  • 営業が空き時間の仕事になっている。 忙しい間は止まり、案件が終わってから次の顧客を探し始めている。

たとえば「業務システムを開発できます」だけでは、相手は相談してよい内容を判断しにくくなります。「複数の表へ同じ注文内容を入力している会社の、二重入力を減らす仕組みを作れます」なら、困っている担当者が自分の仕事と結び付けられます。

開発力を高めることに加えて、誰の、どんな困りごとを解決できるかを伝え、その相手と話す機会を作ることが必要です。

直接取引では、提案の自由と顧客対応の仕事が増える

直接取引では、顧客が困っている理由を自分たちで聞き、必要な開発を提案できます。納品後も話を聞ければ、使い方の改善や次の開発について相談を受ける機会になります。

ただし、契約金額が増えても、利益が増えるとは限りません。元請けが担っていた打ち合わせや見積もり、調整も、自社の仕事に加わるためです。開発の一部を受ける場合と比べると、主に次の違いがあります。

比べる点

元請けから開発の一部を受ける場合

顧客と直接取引する場合

困りごとの把握

元請けが整理した内容を受け取ることが多い

顧客に聞き、何を解決するかを一緒に決める

提案する範囲

依頼された範囲が中心

何を作るか、今回は作らないかも提案できる

見積もりと変更

元請けと担当範囲を調整する

顧客へ費用・期間を説明し、追加の依頼も調整する

納品後の対応

取り決めた範囲で元請けに対応する

問い合わせの窓口や修正・保守の範囲を顧客と決める

実際の分担は案件によって変わります。すでに顧客との調整を任されているなら、その経験は直接取引でも生かせます。

反対に、作る内容が決まってからの開発しか経験していない場合は、まず顧客の話を聞き、作業範囲をまとめる担当者が必要です。いきなり大きな案件を丸ごと受ける前に、引き受けられる仕事を見極めましょう。

今の売上を守りながら、直接取引の最初の1件を作る

進め方は、経験のある小さな案件を決め、顧客対応の時間を確保し、新しい顧客への働きかけや紹介を通じて受注を試すという順序です。最初の案件でかかった費用と時間を確かめてから、直接取引を増やします。

ここでは実務上の目安として、最初の案件を選ぶときに「業務を絞れるか」「自社に経験があるか」「顧客側の窓口が決まっているか」「納品後まで対応できるか」の4点で整理します。

最初は、経験のある業務を一つ選ぶ

小さな案件とは、金額が安い案件ではありません。何を作れば完了するかが分かり、自社で対応する範囲を限れる案件です。

たとえば、説明用の例として、注文情報を扱う仕組みを考えてみましょう。最初から受注・在庫・請求のすべてを作り直すと、聞く相手も調整する内容も増えます。

まずは「注文データを二つの表へ入力している作業を、一度の入力で済むようにする」と絞ります。自社に同種の開発経験があり、顧客が今の作業を説明できるなら、必要な機能と完了の条件を話し合いやすくなります。

既存の仕組みが分からず、作業量も読めない場合は、調査と改善案の整理を先に提案する方法があります。調査で行うことと費用を合意してから進め、全体の開発費を急いで約束しないようにします。

受ける範囲と、顧客と話す担当者を決める

顧客と直接契約する前に、自社と顧客の双方で次の点を確認します。

  • 今回解決する困りごとと、今回は対応しない範囲が分かっている
  • 顧客側に、現場の仕事を説明する人と、内容を決める人がいる
  • 自社で、打ち合わせ・見積もり・進行管理を担う人と時間を確保できる
  • 何ができたら納品完了か、変更が出たら費用と日程をどう見直すかを共有している
  • 支払いの時期と、納品後の問い合わせ・修正・保守の範囲を確認している

たとえば代表が相談を受けるなら、開発が忙しくても顧客へ返答できる時間を先に予定へ入れます。担当者を決めても、その人の予定が既存案件で埋まっていれば、直接取引を増やす余地はありません。

既存案件の納期が重なる時期は、新しい案件の開始時期を調整します。売上の割合だけを目標にして、現在の仕事を急に減らす必要はありません。

営業と開発を兼務する体制の整え方は、受託開発会社が営業と納品を両立するための記事でも詳しく解説しています。

売上だけでなく、かかった時間を見て次を決める

最初の直接案件では、開発時間に加えて、営業、打ち合わせ、見積もり、修正、納品後の対応にかかった時間も記録します。外注費などの支出と合わせ、想定した利益が残ったかを確かめます。

相談が増えていても、見積もりに時間がかかりすぎるなら、受ける業務をさらに絞ります。納品後の問い合わせが想定を超えたなら、次の案件では対応範囲や保守の費用を見直します。

利益と対応時間に無理がなく、既存案件の品質も保てると確かめられたら、同じ種類の直接案件を増やします。最初の1件は、自社に合う直接取引の形を確かめる機会と考えると、次に増やす仕事を選びやすくなります。

直接取引につながる顧客との接点を増やす

受けたい案件と対応できる範囲が見えたら、その困りごとを持つ顧客との接点を作ります。既存取引先との約束を守り、新しい顧客を開拓する前提で進めます。

顧客へ直接働きかける方法を選ぶ

営業先を自分で選べるなら、対象の業務に困っていそうな企業へ連絡し、相談のきっかけを作ります。会社紹介だけを送るより、困りごとの例と、最初に何を相談できるかを短く伝えると、相手が判断しやすくなります。

同じ相談を繰り返し受けるなら、自社サイトに説明を載せる方法もあります。公開してよい実績の範囲で「何に困っていたか」「どこまで対応したか」を示すと、初めて会う顧客にも得意分野を伝えられます。ただし、記事を載せた後も、相談への返答や提案を担う人は必要です。

案件を探す時間が限られる場合には、発注企業と開発会社をつなぐマッチングサービスも選択肢です。費用、比較される相手、相談できる案件の内容を確認し、自社が受けたい仕事と合うかを見ます。

どの方法でも、窓口が増えるだけで終わらず、顧客と直接話せるか、自社と顧客の契約になるかを確かめます。

顧客の困りごとを先に聞いている会社とつながる

顧客へ一社ずつ働きかけることに加えて、業務の困りごとをすでに聞いている会社と協力する方法があります。

たとえば、業務のデジタル化を支援するコンサルティング会社、経理などの業務を代行するBPO会社、企業の相談を受ける税理士などです。自社が受けたい相談を先に聞く立場で、開発まで自社では対応しない相手が候補になります。

説明用の例として、BPO会社が顧客の注文入力を代行している場面を考えます。同じ情報を複数の表へ転記する負担に気付いたとき、「入力の仕組みを改善できる開発会社がいる」と紹介してもらえれば、具体的な業務の相談から話を始められます。

紹介する側の利点も話し合いましょう。たとえば、入力の仕組みは開発会社が整え、入力内容の確認や日々の運用はBPO会社が担うという分担が考えられます。相手の仕事をただ減らす提案にならないよう、誰が何を担えば、顧客にも両社にも役立つかを確認します。

紹介元には、会社名や技術の一覧だけでなく、「こんな困りごとが出たら相談をつないでほしい」と伝えます。初回に何を聞くか、相談後にどのような提案をするかも共有すると、相手が顧客へ説明しやすくなります。

紹介後は、顧客が共有してよい範囲で進み具合を報告します。次につながる相談の特徴を伝え直すことで、相手も紹介しやすくなります。紹介元を増やすときは、同じ1社からの紹介だけに依存しないよう、相性のよい相手との関係を少しずつ広げていきます。

紹介依頼の伝え方や紹介後の動き方は、受託開発の新規開拓と紹介を増やす記事が参考になります。

紹介元を探す時間がないとき、SparkLaboに任せられること

受けたい案件を決めても、「その相談を聞いている会社を知らない」「開発が忙しく、紹介元との連絡が止まる」という壁が残ることがあります。

SparkLaboは、案件を紹介し合える企業とのつながりを作り、紹介が偶然だけに頼らず続くように支援するサービスです。自社の知人だけで顧客を探す状態から、新しい紹介・協業先を通じて案件を増やしたい開発会社に向いています。

開発と保守の案件につながった顧客事例

SparkLaboが支援したシステム開発企業では、新たな開発案件と、納品後の運用を支える保守契約につながった顧客事例があります。

見込売上450万円システム開発企業の顧客事例5か月で開発2件・保守1件

この企業は既存の紹介に依存し、新しい案件を得る仕組みが不足していました。SparkLaboは、業務のデジタル化や補助金の支援会社、Web・マーケティング会社、士業・BPO会社などとの協業を提案しました。

この事例で確認できるのは、紹介元を広げる取り組みが開発・保守の案件につながったことです。直接取引への切り替えを示す事例ではありませんが、今の紹介元の外に案件獲得ルートを作りたい会社が、進め方を考える材料になります。

方針づくりから紹介元の探索、継続まで支援する

SparkLaboでは、コンサルタントが現状と希望を聞き、次の取り組みを支援します。

  • 増やしたい仕事を一緒に整理する。 得意な開発や現在の悩みから、どんな案件と紹介相手が合うかを考える。
  • 紹介・協業の候補を探してつなぐ。 5,000社以上との直接接点を土台に、自社の人脈だけでは見つけにくい相手を探す。
  • 出会った後の取り組みを進める。 紹介につながる活動の企画・運営と、月次の振り返り・改善を支援する。

開発会社が持つ技術や顧客対応の力に、新しい顧客へつながる接点づくりを組み合わせる支援です。顧客との開発範囲や見積もり、納品後の対応は自社で判断しながら、紹介元の探索や関係づくりを一社だけで抱え込まずに進められます。

ここまでの手順を、相談前に終えておく必要はありません。「直接取引を増やしたいが、自社に何が足りないか分からない」という段階から、一緒に整理できます。

執筆者

樫根 久澄のプロフィール写真

樫根 久澄

株式会社SparkNow 代表取締役CEO/SparkLabo運営

早稲田大学政治経済学部卒業。双日株式会社でファイナンス業務に従事後、エンジニアに転身し、システム開発会社の海外拠点代表を務める。2022年にオンライン診療スタートアップを創業し、売却を経験。

BtoB事業の顧客開拓のため、30の経営者コミュニティに入会・参加し、経営者交流会には1,000回以上参加。20以上のアポイント獲得サービスを利用し、累計2万枚のデジタル名刺を自ら配布。こうした実践を通じて、出会いを継続的な案件獲得につなげる難しさを実感し、企業同士の紹介・協業を通じたパートナーセールスを支援する「SparkLabo」を立ち上げる。SparkLaboでは、経営者交流会・会食の開催・共催を100回以上重ねている。